編著/共著

馬定延、渡邉朋也(編著)

SEIKO MIKAMI 三上晴子 記録と記憶

NTT出版
2019年3月
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現代美術家・メディアアーティストの三上晴子(1961-2015)をめぐる本。作家本人の国内未発表の原稿、初期から晩年までの作品図版、略年譜とともに、それぞれ異なる立場から綴った三上論を収録した。第1部の寄稿者は、今野裕一、高祖岩三郎、四方幸子、アンドレアス・ブレックマン、阿部一直、久保田晃弘で、国内外で三上と協働した個人的な体験と記憶に基づき、作家と教育者としての人間像を描いた。それに対して、椹木野衣(ART iT再録)と飴屋法水による第2部は、前部と同様、同時代を滑走した関係者からの証言でありながら、三上の作品世界の一貫する意味を模索する批評的試みである。そして、弟子世代にあたる編著者2人による第3部で紹介された、作品の修復保存プロジェクトと30年の活動を概観するアーカイブ資料の解読は、山口情報芸術センター[YCAM]と多摩美術大学が行ってきた共同研究プロジェクトの成果を反映している。本書は、これからの三上研究のために必要な最低限のパズルだといえよう。故人が美術史のなかで生き続けられる環境を整える作業は、まだはじまったばかりなのである。

(馬定延)

広報委員長:香川檀
広報委員:白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2019年10月8日 発行