編著/共著

西垣通(編著)、原島大輔、ほか(著)

基礎情報学のフロンティア 人工知能は自分の世界を生きられるか?

東京大学出版会
2018年8月
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表象文化論的な情報技術論と人工知能論の先駆と呼ぶべき仕事の数々を世に問うてきた西垣通氏──たとえば17世紀西欧の表象革命と20世紀の情報革命を結ぶ一筋の知の系譜を描き出した『秘術としてのAI思考』(のちに『思考機械』として文庫化)──が創設した、生物と機械をつなぐ総合知としての基礎情報学(『基礎情報学(正・続)』)。その最近の成果を集めた論文集が、本書『基礎情報学のフロンティア』である。人間と機械を同一視することによって引き起こされる諸問題を、みずからの情報技術者としての経験によっても身をもって痛感してきた西垣氏が提唱するテクノロジーの設計理念は、機械中心ではなく人間中心の情報システムである。これを早計に素朴な人間中心主義と誤解してはならない。むしろそれは西欧近代的な人間像を生命論的な情報学の視点から問い直しているのである。別言すれば、近代的な人間中心主義に依拠した社会制度の限界がさまざまに露呈してきた現代の諸問題を、正面から向き合うことなくデータ中心主義によってなし崩しに解消してしまおうとする風潮に、警鐘を鳴らしているのである。基礎情報学は、素朴実在論と表象主義に立脚した一元論的な機械論を批判し、オートポイエーシス理論をはじめとするネオ・サイバネティクスの考え方を応用したシステム論であり、生物と機械を自律システムと他律システムとして区別したうえで、情報社会について考察する。本書には、こうした問題意識とアプローチを共有した論者たちが現代の情報技術と人工知能の問題に取り組んだ、8本の論文が収録されている。

(原島大輔)

広報委員長:香川檀
広報委員:利根川由奈、白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2019年2月17日 発行