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国際シンポジウム「Japanese Cinema: What Is It? 」

報告:佐藤元状

Japanese Cinema: What Is It? は、報告者が企画し、2025年1月13日 にオンラインで開催した国際シンポジウムである。日米の映画研究者、メディア研究者、表象文化研究者、英米文学研究者が一堂に介して、「日本映画」とは何か? という根源的な問いについて、学際的かつグローバルな観点から議論した。基調講演には、英文学者・映画批評家のD. A. ミラー氏、日本映画・文化研究者のリンジー・ネルソン氏をお迎えした。以下、二人の講演を軸にそのダイジェストを紹介し、シンポジウムの意義について考察する。

まずは二人の基調講演の内容から見ていく。ミラー氏の講演タイトルは、Wim Wenders’ Perfect Days: Japanese Film as Genreである。ドイツの映画監督ヴェンダースが日本で制作した映画Perfect Daysはいかなる映画ジャンルに属すると考えられるのか、を考察した論考である。現代のグローバルな資本と文化においては、ナショナル・シネマとは異なる領域横断的な映画ジャンルが成立していることを提起する基調講演であった。ネルソン氏の講演タイトルは、The Edge of Cinema: Japanese Horror in a Changing Media Landscapeである。Jホラーは現代の日本映画の一つの重要な柱であるが、現在メディア状況そのものが劇的に変化していて、ホラー作品が、YouTubeなど、映画以外のメディアで展開していることを明らかにする刺激的な講演であった。

そのほかにも伊丹十三、吉田喜重、日本アニメの「キャラ的記憶喪失」、濱口竜介、石田民三、昆虫=女の表象、現代台湾映画、現代日本映画と台湾映画の比較など、みのり豊かな研究発表が行われた。英語でこれだけ幅広いテーマの学際的な研究発表が行われたことは、日本のみならず世界の日本映画研究においても、大きな貢献であったと考えられる。

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広報委員長:原瑠璃彦
広報委員:居村匠、岡本佳子、菊間晴子、角尾宣信、堀切克洋、二宮望
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2025年6月29日 発行