翻訳

ミヒャエル・H・カーター(著)、森貴史(監訳)、溝井裕一、ほか(翻訳)

SS先史遺産研究所アーネンエルベ ナチスのアーリア帝国構想と狂気の学術

ヒカルランド
2020年2月
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「アドルフ・ヒトラーの右腕」と呼ばれたハインリヒ・ヒムラーは、強制収容所をヨーロッパ各地に建設し、そこでユダヤ人の人体実験をおこなわせた張本人として知られている。とはいえ、そうした人体実験が、じつはヒムラーが主宰する学術協会「アーネンエルベ」によって指示されていたことは、あまり知られていない事実だと思われる。

この謎の学術組織「アーネンエルベ」の全貌を解明したのが、本訳書である。ヨーク大学特別名誉教授ミヒャエル・H・カーターの原著初版は1974年に公刊されたが、2006年には第4版が上梓されており、その稀少価値は21世紀以後もいまだ失われていない。

強制収容所での凄惨な人体実験のほか、ルーン文字研究、紋章学、北欧神話、チベット探険、宇宙氷説、人種論、遺伝学、ダウジングロッドといった広範な領域におよぶ活動を、多数の学者とその研究内容とともにあまさずに言及しつつも、ヒムラーが首魁であったこの学者組織の興亡を論究した、全800ページにおよぶきわめて専門的な学術研究書である。

くわえて、現在はすでに都市伝説化しているナチス・オカルティズムの歴史的事実が記されている部分は、本訳書最大の読みどころのひとつとなっている。

(森貴史)

広報委員長:香川檀
広報委員:白井史人、原瑠璃彦、大池惣太郎、鯖江秀樹、原島大輔、福田安佐子
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2020年6月23日 発行