翻訳
サヴォワ邸の明るい時
鹿島出版会
2024年12月
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本書はル・コルビュジエ設計のサヴォワ邸、そのクライアントであったサヴォワ夫妻の孫にあたる作家・編集者ジャン=マルク・サヴォワ(Jean-Marc Savoye)と画家ジャン=フィリップ・デローム(Jean-Philippe Delhomme)によるLes Heures Claires de la Villa Savoye (Édition des Quatres Chemins, 2015) の翻訳である。建築について語る時、我々は建築家の創意工夫のあとを辿ることに終止しがちだが、本書ではル・コルビュジエ財団に残されたサヴォワ邸にかかるいくつもの資料、とくに祖父母とル・コルビュジエとのあいだに交わされた書簡を軸に、クライアントの側からみた近代建築史上のアイコン、サヴォワ邸を語る。資料から再構成されたサヴォア邸の物語、そして祖母と孫、父母と孫とのかすかな思い出にのせられ、ジャン=フィリップ・デロームのたっぷりと空気を含んだようなイラストレーションの世界へと読者はひきこまれていくだろう。家族のあいだだけで交わされる親密な会話が快く聞こえてくるかのようだ。読者もぜひ本書のページを繰りながら、この建物に暮らした人たちの明るい幸福な時間に、ときに悪戦苦闘に想いをはせてもらいたい。
(戸田穣)