2020年12月19日(土)
午後 15:15-17:15

2016年のオックスフォード辞典の今年のワードに選出され、同年の米国大統領選の報道において頻繁にメディアに取り上げられた「ポストトゥルース」という現象については様々な議論がなされてきた。今年邦訳書が刊行されたリー・マッキンタイア『ポストトゥルース』は、同現象について、科学的真実との関係、認知バイアスの問題、伝統的メディアの凋落とソーシャルメディアの台頭、ポストモダニズムとの関係といった視点からコンパクトに論じている。同書の議論を起点としながら、「真実」という哲学、美学、文学の中でも根源的な価値を支えてきた概念が置かれている状況について、巨視的な視点と今日的重要性を重ね合わせつつ、4人の登壇者の発表と共同討議を通じて探究したい。上記訳書の監訳者である大橋はポストトゥルースのもつ解釈学的要素とその展開について、ポストモダン理論の影響を考慮しつつ批判的に検証する。司会も務める髙村はリチャード・ローティによる議論を参照し、「真実」の擁護者として扱われることの多いオーウェルの曖昧性を考察する。秦は、ジョージ・オーウェルの言語観と20世紀前半の英文学批評理論の対比から「文学」と「真理」の関係性について考察する。宮﨑は、デリダ『嘘の歴史』から出発し、その洞察が、真実と嘘(フェイク)をめぐる現代の諸問題に対していかなる示唆を与えているかについて考える。

発表者:
髙村峰生(関西学院大学)
大橋完太郎(神戸大学)
秦邦生(東京大学)
宮﨑裕助(新潟大学)
【司会】髙村峰生(関西学院大学)

〈参加登録〉ワークショップ:「ポストトゥルース」的状況──客観的真実の終焉?
https://zoom.us/meeting/register/tJUof--hqz8iG91eGRqR3lM8RXF8RAZ2xRPo