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表象文化論学会 ハラスメント防止宣言

近年、高等教育・研究機関におけるハラスメント事例が国内外で表面化し、ハラスメントを醸成する文化の迅速な変容があらためて要求されている。多種多様な文化的事象を解明し、諸力の交錯する政治的な行為の空間を考察する表象文化論学会にとっては、学会という組織やその活動もまたその解明・考察の対象のひとつであるとの認識に基づき、本学会員とそれに関係する人々の権利と尊厳を不当に損なう力の行使を許容しない空間の生成と維持とが喫緊の課題であると考える。

本宣言では、修学・教育・研究上や職務上の、あるいは性別、人種、民族、国籍、宗教、思想、年齢、性的指向、性同一性、外見、身体的特徴、障害の有無など人がもつさまざまな属性に基づく当事者間の力関係の非対称を濫用して、本学会員とそれに関係する人々の権利や尊厳を脅かし、公正かつ安全な教育・研究・労働環境を損なう行為や言動を広く指して、ハラスメントと呼ぶ。ここには、セクシュアル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント、パワー・ハラスメントなどが含まれる。また、ハラスメントは上司と部下、教員と学生といった正式な身分関係にある者の間にのみ起こりうるわけではない。

学会におけるハラスメントは、個別の大学組織内にとどまらない関係の中で生じるために学内の対応部署に訴えることが難しく、同時に、専門分野の閉ざされた人的ネットワークの中で生じるために被害者の修学・教育・研究上の将来への影響が大きくなりやすい。とりわけ、大学院生、ポスドク、非常勤講師など、その立場が不安定な研究者にとってこれは研究活動の断念にもつながる深刻な問題である。この問題を放置することは人権侵害への加担に他ならないのに加え、学術界を支える土台の侵食を見逃すことにも等しい。

表象文化論学会は、本学会員とそれに関係する人々の権利と尊厳を尊重し、ハラスメントや人権侵害のない公正かつ安全な学術活動の空間の実現に努めることを、ここに宣言する。

2020年7月12日
表象文化論学会

表象文化論学会 ハラスメント防止ガイドライン

  1. ガイドラインの目的
    表象文化論学会(以下、本学会)は、「ハラスメント防止宣言」に基づき、各種ハラスメントの派生を防止することで、本学会員とそれに関係する人々の権利と尊厳を守り、各自が自由で快適で安心できる学会活動や職務に従事できるようにすることを目指し、本ガイドラインを制定する。
  2. 基本方針
    本学会は、学会に関わる人々の権利や尊厳を守るために、ハラスメントが生じないような環境の確保およびハラスメントが生じている懸念があると判断される場合に、すみやかかつ的確に事態を把握し、被害者の権利の擁護・尊厳の維持回復に主眼を置いて迅速に適切な対処を行なうことに努める。
    本学会は表象文化論の発展および普及を図ることを目的として結成された学術団体として、この目的に反する、会員などの自由で安全、快適な研究環境ならびに学会活動を脅かすあらゆる人権侵害、差別やハラスメントに対し、しかるべき防止策および対応策を講じる。
  3. ガイドラインの適用範囲
    本ガイドラインは、原則として会員同士もしくは会員とこれに関わる人々との間で生じた学会活動に関わるあらゆる行為について適用される。
    総会、大会、研究発表集会とこれに関連する活動、ならびに理事会、委員会や事務局などにおける活動、本学会が主催するシンポジウム・講演会などにおける活動、学会誌などの出版活動、事務局への問い合わせや諸手続きの遂行に関わる活動、学会ウェブサイトやメーリングリスト利用上の行為など、いずれの活動にも適用される。
    上記の学会活動に関わるものであれば、会員同士のみならず、会員が非会員の人や組織に対して行なった行為、非会員の人や組織が会員に対して行なった行為についても適用される。
  4. ハラスメントとは
    ハラスメントとは、修学・教育・研究上や職務上の、あるいは性別、人種、民族、国籍、宗教、思想、年齢、性的指向、性同一性、外見、身体的特徴、障害の有無など人がもつさまざまな属性に基づく当事者間の力関係の非対称を濫用して、本学会員とそれに関係する人々の権利や尊厳を脅かし、公正かつ安全な教育・研究・労働環境を損なう行為や言動を広く指す。下記に列挙するハラスメントの区分は暫定的なものであり、たとえばセクシュアル・ハラスメントとパワー・ハラスメントが同時に生じる場合もありえる。

    (1)セクシュアル・ハラスメント
    セクシュアル・ハラスメントとは、相手方の意に反する性的な発言や行為、また、性別や性的指向、性同一性などに関する発言や行為によって生じるハラスメントである。どのような性別間でも起こりえる。妊娠、出産、育児を理由としたマタニティー・ハラスメントの形をとることもある。たとえば、以下のようなものがある。

    各種委員会、学会発表の場、広報文など学会活動に関わる状況で、性差別的な発言や性的少数者に対する攻撃を行なう。
    • 「男なんだから」「女のくせに」といった性別役割を前提とした発言をする。
    • 飲物や食事の準備などを女性にのみ担当させる。
    • 恋愛経験や性体験についてしつこく尋ねる。
    • 連絡先などの個人情報やプライバシーに関することをしつこく尋ねる。
    • 断られているにもかかわらず、交際を迫ったり、つきまとう。
    • 相手の意に反して、身体に接触したり、極度に接近する。
    • 胸や足、顔などをじっと見つめる。
    • 見かけ上の性別がわかりにくかったり、典型的でない人をからかう。
    • 本人の了承なく、その人の性的指向や性自認について暴露したり、あげつらったりする。
    • 出張中の宿泊先を執拗に尋ねたり、懇親会・二次会に無理やり誘う。
    • 育児中の学会員に対して、「男のくせに育児休業をとるなんて」と配慮のないかたちで仕事を押し付ける、あるいは「女は育児に集中すべき」と主要な仕事から外す。
    • 「あなたが妊娠したせいで私たちの仕事が増えた」と嫌味を言う。
      妊娠時に仕事を軽くするよう求められて「妊婦として扱うつもりはない」「つわりは病気じゃない」などと言い、配慮しない。
    • 「あかちゃん(子ども)が可哀そう」と言い、研究を続けるのが身勝手な行動だと指弾する。
    (2)アカデミック・ハラスメント
    アカデミック・ハラスメントとは、教育・研究上の力関係を濫用することによって生じるハラスメントである。たとえば、以下のようなものがある。
    • 不当に他会員の研究発表の機会を制限したり、意図的に人の集まりにくい会場を割り当てるなど発表にとって不利な状況を作る。
    • 論文の査読や学会賞への推薦において不当な評価を行なう。
    • 望まない役職を強要する、または着任を妨害するなど、学会活動における選択の権利を侵害する。
    • 「こんな発表をして恥ずかしくないのか」「幼児でももっとましな文章を作れる」など暴言や過度の叱責をおこなう、相手の人格を傷つける言動をする。
    • 学会会場や宿泊先などまでの送迎を強要する。
    • 本学会への発表申し込みや論文投稿に際し、指導学生のアイディアを盗用する、実質的な研究に寄与していないにもかかわらず共著者に入れるよう強要する、データや資料の改ざんを指示するなど研究倫理に反する不正行為をする。
    (3)パワー・ハラスメント
    パワー・ハラスメントとは、職務上の優越的な地位や権限、または人間関係などの優位性を利用して行なう言動によって生じるハラスメントである。地位の上下関係や組織を利用し、心理的圧力をかけて飲酒を強要するアルコール・ハラスメントの形をとることもある。たとえば、以下のようなものがある。
    • 学会誌作成や学会準備などの学会活動で、正当な理由なく仕事を押し付ける。
    • 権限を持っている人が、学会発表や委員会などにおいて必要な情報を意図的に伝えない。
    • 本来の役職と無関係な、個人的な用事を強要する。
    • 多数の人に向けて特定の人物を不当に罵倒する、能力や性格について侮辱的な発言をする。
    • 個人情報や噂を言いふらして、当人の不利益になる状況を作る。
    • 障害があるからという理由で、学会運営、議論、懇親会から排除する。
    • 懇親会およびその二次会などで、本人の望まない飲酒を強要する。
    • 「PDとしてうちの大学に来る人には、酒にも付き合ってもらいたいね」など断りづらい状況を作って飲み会への参加を強要する。
    • アルコールを飲めない・飲まない人への配慮を欠いた言動や行動をする。
    • 健康上の理由で特定の食生活を送る人に対し、侮辱したり本人が望まない飲食を強要したりする。
    (4)レイシャル・ハラスメント
    レイシャル・ハラスメントとは、民族的出自、肌の色、人種、国籍、宗教、思想・信条などを理由として生じるハラスメントである。たとえば、以下のようなものがある。
    • 日本語能力に不安があるなどの不当な理由をつけて研究成果を正当に評価しない。「日本人しかいない場所では居心地が悪いだろう」などと配慮を装い、学会運営、議論、懇親会から排除する。
    • 人種、民族、国籍、信条に関連した攻撃的で侮蔑的言動を行なう。「○○人は無礼だ」「××なんてもう消滅した民族でしょ」など受け手の属性に対し攻撃的な発言をしたり、宗教上身につけている衣類などを外すよう強要する。
    • 身体的、文化的な特徴や行動様式に対する揶揄やからかい、差別的な言動を行なう。たとえば「この人はこんな見た目ですが日本語は大丈夫です」など身体的特徴を揶揄するジョークをいう。
    • 民族マイノリティに対し、ルーツがある地域の問題について責任があるかのように追求する。
    • 「日本人ならわかると思いますが」などと人種や民族的出自の多様性を無視した前提の言動を行なう。
    • 本人の意思を無視して、人種的・民族的属性を公表したり問いただしたりする。
    • 宗教的または倫理的な理由で、特定の食生活を送る人に対し、侮辱したり本人が望まない飲食を強要したりする。
    • 本人の宗教的信条からタブーとされている飲食物を知りながら、「この料理なら大丈夫」と偽って食事などを勧める。
    • 懇親会など学会で提供する飲食物に対する宗教的または倫理的な理由に基づく要望をあからさまに拒絶する。
    • ヴィーガンに対し「植物なら命を奪っていいのか」と繰り返し問いただしたり、「私は動物の命をいただくことに敬意を持っている」と無理解をことさらに表明したりする。
  5. ハラスメントを受けたと感じたら、または目撃したら「ハラスメントに関する相談の手順」をご覧ください。

ハラスメントに関する相談の手順

  1. ハラスメント対策委員への連絡
    ハラスメントを受けたと感じたら、または目撃したら、窓口担当のハラスメント対策委員に連絡してください。どなたに連絡してもかまいません。その知人や家族などからの連絡も受けます。あなたが相談したことが、意に反して他に知られることはありません。窓口担当の委員は、相談者からの同意を得て、ハラスメント対策委員長または副委員長に報告します。

    2020年度窓口担当委員:
    石田美紀(新潟大学):repre.ah.1*
    加藤有子(名古屋外国語大学):repre.ah.2*
    金井直(信州大学):repre.ah.3*
    久保豊(早稲田大学):repre.ah.4*
    佐藤守弘(同志社大学):repre.ah.5*
    清水晶子(東京大学):repre.ah.6*
      *は@gmail.comに置き換えてください。
  2. 事案対策チームの設置
    報告を受けたハラスメント対策委員長または副委員長は、ハラスメント対策委員から事案対策委員を選出して事案対策チームを設置します。相談者のプライバシーは守られます。
  3. ハラスメントへの対応・処分、被害の拡大・再発防止の措置
    事案対策チームは、相談内容を検討し、当事者および関係者などから事情を聴くなどして調査を行い、それに基づいて、ハラスメント対策委員会は、ハラスメントへの対応・処分、被害の拡大や再発を防止する措置などを学会に対して提案します

    2020年度ハラスメント対策委員会
    北原恵(委員長 大阪大学)
    加治屋健司(副委員長 東京大学)
    石田美紀(新潟大学)
    加藤有子(名古屋外国語大学)
    金井直(信州大学)
    久保豊(早稲田大学)
    佐藤守弘(同志社大学)
    清水晶子(東京大学)