2025年8月30日(土)・31日(日) 9:00-18:30(両日とも)

美大じゃない大学で美術展をつくる vol.3|SOS 応答と対話で「何か」を探す
SOS: Searching Of Something through Responses and Dialogues

武蔵大学江古田キャンパス内 9:00-18:30(両日とも)

キュレーション:小森真樹(武蔵大学)
参加作家:
西野正将(美術家、映像ディレクター)
ふくだぺろ(アーティスト、詩人、マルチモーダル人類学者)
*展示MAPは受付にて配布


 「SOS 応答と対話で『何か』を探す」プロジェクトは、コミッションワークを通じた制作、展覧会、そして対話セッションから構成されます。それらは、アーティスト同士があらかじめ定めたルールに基づいて制作物を往還させる〈応答〉と、そのプロセスや作品についてキュレーターを含めて議論する〈対話〉という二つのパートを中心に進められます。
 出品作品には、西野正将とふくだぺろの二名のアーティストが互いに対話のように応じ合いながら制作した〈応答〉に加えて、武蔵大学の歴史そのものに対するアーティストたちの〈応答〉も含まれます。〈応答〉を言語化する〈対話〉を通じて、協働制作や展覧会の主題そのものが制作のプロセスとともにかたちづくられていくような、開かれた枠組みとして本展は構想されています。
 会期中には、表象文化論学会のパネルとして〈対話〉を公開形式で実施し、展示物や制作の過程について制作者自身が語り、ワークショップを通して参加者が制作の枠組みに参加する機会が設けられます。映像、詩、文学、インスタレーション、パフォーマンスなど、表現手法に制限を設けず、幅広いメディアによって両者の可能性を引き出していきます。
 本展では、完成された作品だけでなく、プロジェクトでの試作品とオープンエンドなプロセスをあわせてご覧いただくことで、「展覧会をつくる」という行為そのものを考える機会になればと考えています。

 基幹事業となる本展では、〈応答〉の成果作品、〈対話〉のドキュメンテーションに加えて、さらに武蔵大学における歴史調査を起点にした新作を発表します。西野は、三号館中庭で朽ちたトネリコの大木から作られた記念バットの来歴をたどりながら、キャンパスの「地層」を地球史的なスケールで掘り下げ、人文学的に再生を試みます。ふくだは、キャンパス最古の人工物である不動明王像に、皇紀2737年の「Cyberpunk 武蔵明王」という未来の偽史を書き込みながら、せせらぎ広場の川縁にスペクタクルとして蘇らせます。
 二つの歴史語りはキャンパス以前の「墓跡」というトポスの記憶と交差しながら、大学の歴史を江古田の町へと響かせていきます。

西野正将(NISHINO Masanobu)
1982年大分県生まれ。美術家・映像ディレクター。東京を拠点に活動している。東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現修士課程を修了し、絵画から出発した制作は映像、写真、プロジェクトとメディアにとらわれないスタンスに変化しながらも、日々の生活の中で感じる「違和感」を日常を考察するための新たな視点として提示するスタイルで発表を続ける 。日常の中で感じた違和感を題材に、メディアにとらわれないスタイルで現在まで多数の展覧会に参加してきた。また映像ディレクターとしても活躍し、美術館や芸術祭の記録映像の撮影を数多く手がけてもいる。主な展覧会に、「中之条ビエンナーレ2015」(群馬)や「黄金町バザール2016」(横浜)など。

ふくだぺろ(FUKUDA Pero)
アーティスト、詩人、マルチモーダル人類学者。京都大学特定研究員。イギリス、ルワンダ、日本をフィールドに、現実と過去(未来)の創造を主要テーマに、論文、映像、詩、写真、小説、スケッチなど多様なメディアを用いてマルチモーダルに展開する。ルワンダのトゥワ(Batwa)と呼ばれる元狩猟採集民のコミュニティにおける暴力と音楽に関する研究を感情や身体性に焦点を当てたアプローチで行う。また詩集『flowers like blue glass』(Commonword Enterprises Ltd、2018)は、英語と日本語、余白の三つの言語を駆使した視覚詩的作品である。研究と芸術、各表現メディアの境界を越えた活動により、人類学的な知をマルチモーダルな表現を通じて再定義している。

小森真樹(KOMORI Masaki)
武蔵大学人文学部教授、立教大学アメリカ研究所所員。アメリカ文化研究およびミュージアム研究で、特に博物館や美術館における歴史の再構築や展示の政治性に関心をもっている。キュレーション、雑誌編集、批評にも携わる。主著に、『修正主義ミュージアム』(太田出版、2025年)、『楽しい政治 「つくられた歴史」と「つくる現場」から現代を知る』(講談社、2024年)。企画に、『美大じゃない大学で美術展をつくる|vol.1 藤井光〈日本の戦争美術 1946〉展を再演する』 (ART DIVER、2025年)、古民家を活用したゲストハウス型プロジェクト『かじこ|旅する場所の108日の記録』(三宅航太郎、蛇谷りえと共著、2010)、ウェブマガジン〈-oid〉(2022-)など。