2023年7月8日(土)17:00-18:30
東京大学駒場キャンパス・21KOMCEE East地下K011

AIがコトバすらすら読み上げる、2023年の夏。
ここらでひとつ、われら人間の〈語り〉へと立ち返ってみましょうか。
身を震わせて語るひと。それを聴くひと。息と息。
数字にならぬマの淵に、ひとの「あわれ」が立ちのぼる。
すこぶる人間らしい遊び、〈語り〉の時空へ、ひらりとご案内 ──

当公演では新内節演奏家の岡本宮之助師をゲストにお迎えし、新内節の実演とトークを通して、古より情の共同体を支えてきた〈語りもの〉の魅力に迫り、その現在と未来を展望します。

新内節は、扇情的とも評された京都発祥の豊後節の流れを汲み、江戸中期に鶴賀若狭掾とその美音の門弟・鶴賀新内によって確立された江戸浄瑠璃の一派です。早くから劇場を離れて素浄瑠璃として発展し、また、遊里を舞台とした「流し」と呼ばれる路上パフォーマンスで人気を博しました。三味線と不即不離の柔軟な間拍子と情感溢れる節回しで人情の機微を細やかに語る芸風は、庶民に愛され続けています。

尚、当公演は言葉の身体性を追い続けた研究者/演出家 渡邊守章先生へ捧げるイベントです。

<出演>
浄瑠璃 岡本宮之助・岡本宮弥
三味線 鶴賀喜代寿郎
上調子 岡本文之助

聞き手 小林康夫(東京大学名誉教授)

<演目>
新内流し
古曲『明烏夢泡雪 雪責め』

『明烏夢泡雪』(通称「明烏」)は『若木仇名草』(通称「蘭蝶」)と並ぶ、新内節古曲の代表曲。初代鶴賀若狭掾が明和六年(1769)江戸三河島で起こった心中事件に取材し、遊女浦里と春日屋時次郎の悲恋として脚色、安永元年(1772)に上演したもの。
物語の後半「雪責め」では、時次郎とのやりとりを見咎められた浦里が妓楼の亭主に雪の庭の古木に縛り付けられ、折檻される場面が描かれる。やがて時次郎が屋根伝いに助けにくるが・・・。

映像・渡邊守章×語り( 2010年「語りの系譜樋口一葉作 にごりえ」より 映像協力:京都芸術大学舞台芸術研究センター)
『十三夜』 樋口一葉原作 岡本文弥作品 

明治二十八年(1895)十二月の『文芸倶楽部』に発表された樋口一葉二十三歳の作品『十三夜』を原作とし、岡本文弥が新内節に翻案、昭和三十年(1955)に初演したもの。文学編集者の経歴も持つ岡本文弥は、原作の名文章を生かしながらも大胆に切り詰め、新内的な間と省略の中に、お関と録之助の淡い再会の宵の情感を映画的に浮かび上がらせている。

岡本文弥(1895-1996)は101歳の生涯を現役で過ごし、国内外の文学を原作にしたもの、気鋭の舞踊家との協働による新しい試みであった「新内舞踊」のための作品、反戦・平和のメッセージを込めた作品など、300曲もの新作新内節を創作・発表した。


三世 岡本宮之助(三世 岡本宮古太夫)
岡本流後継者として大叔父・岡本文弥、五世宮染に師事。
岡本文弥と親交の深かった邦楽演奏家・平井澄子にも薫陶を受ける。
岡本流以外では演奏不可能になった多くの浄瑠璃を正しく継承。
「演奏しなければ無いも同然」をモットーに、岡本流のみに残る稀曲の保存に努力する。膨大な文弥作品と共に新内節普及に奮闘中。
また新曲創作にも積極的に取り組む。創作依頼も多く、作品の評価も高い。
演奏会、舞踊会、放送など出演多数。
邦楽実演者連絡会議役員。新内協会理事。新内節岡本流代表。

岡本宮弥
岡本文弥の晩年の舞台に触れ、新内節に心酔。2012年より三世 岡本宮之助に師事。元東京大学表象文化論助手(高橋幸世)。

鶴賀喜代寿郎
1978年 新内如月派 家元鶴賀喜代寿師に入門、1979年「喜代寿郎」の名を許される。
NHK「芸能花舞台」、国立劇場「新内鑑賞会」、歌舞伎座公演、海外公演等出演多数。
新内節三味線方の中堅として各流派からの信頼も厚い。如月派特別顧問。

岡本文之助
1988年岡本流入門 浄瑠璃を岡本文弥、三味線を宮之助に師事。NHK「邦楽のひととき」、「都民芸術フェスティバル」など出演多数。宮之助新作初演全曲の上調子を務めるなど、岡本流を支える三味線方である。