2023年7月8日(土)13:30-16:15
東京大学駒場キャンパス・21KOMCEE East地下K011

 「間(ま/あいだ)」は、たとえば建築家・磯崎新の企画による1978年パリにおける「間(ま)──日本の時空間」展を嚆矢として日本文化論の説明原理とされ、あるいは、精神医学者・木村敏の現象学的精神病理学では「自己」の行為的原理とされるなど、さまざまな分野の鍵概念となってきた。近年では河野哲也『間合い──生態学的現象学の探究 』のような生態心理学的なアプローチもある。時間的・空間的「間」は「リズム」と密接に関係するところから、音楽、歌、詩、語りから建築、美術、デザインに至るまで、広く芸術一般の原理として考察することもできよう。
 本シンポジウムでは文化論・芸術論の分析概念としての「間」のポテンシャルを探るため、磯崎の「間」展を共通の参照対象としつつ、文化人類学、日本庭園・能・狂言、映像メディア学と詩作をそれぞれ専門とする各パネリストが、「間」の概念に関わるあらたな問題設定による展開を自由に試み、討議においてはそれら複数テーマの「間」を問うこととしたい。それ自体が発見法的な展覧会だった「間」展のアプローチを踏襲し、本シンポジウムもまた、あえて「間」口を広く取り、「間」のポエティクス──文化、芸術、ひいては生や社会の創造・生成の論理──をめぐる多様な思索の饗宴を目指す。
 磯崎の「間」展を出発点とするのは、それが「ひもろぎ」をめぐる民俗学の知見などから日本の伝統芸能、さらには現代芸術にまで及ぶ展望のもとに「間」を扱っている点で、多様なアプローチを許容するばかりではなく、2000年には東京で「間──20年後の帰還」展がなされ、本年2023年内にはふたたびかたちを変えてテヘランで開催される予定であるといったように、現在も──20数年の「間」を置いて──継続中のプロジェクトだからである。「間」は磯崎自身の建築のポエティクスにも深く関わっていた。本シンポジウムにおいては、磯崎による展覧会企画で中心的な役割を担われ、テヘランにおける「間」展の実行委員でもある松井茂氏に、一連の「間」展に関する基調講演をお願いしている。
 なお、関連企画として、東京大学教養学部美術博物館(現・駒場博物館)における1979年の磯崎新展に際し磯崎が制作した同博物館改造計画案のオリジナル図面2枚(東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館所蔵)が、本シンポジウム会場近くに当日のみ展示される。

パネリスト(発表順)
松井 茂(映像メディア学、情報科学芸術大学院大学・教授、詩人):基調講演
石井 美保(文化人類学、京都大学人文科学研究所・准教授)
原 瑠璃彦(日本庭園・能・狂言、静岡大学・講師)
司会・コメンテイター:田中 純(表象文化論・思想史、東京大学・教授)

関連展示
磯崎新による「東京大学教養学部美術博物館」改造計画案(1979年)オリジナル図面(東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 駒場博物館所蔵)
2023年7月8日(土)13:00-17:00
東京大学駒場キャンパス・21KOMCEE East地下K011入り口付近通路