2022年11月13日(日)
午後13:00〜15:00

  • 甲斐義明『ありのままのイメージ──スナップ美学と日本写真史』を読む

甲斐義明(著者/新潟大学)
土屋誠一(沖縄県立芸術大学)
前川修(近畿大学)
佐藤守弘(兼司会/同志社大学)


 甲斐義明『ありのままのイメージ スナップ美学と日本写真史』は、「スナップ」をキー概念として据えることによって、1920年代以降の新興写真から現代に至る日本におけるスナップ写真の系譜を、写真の丁寧な分析とそれを取り巻く言説の精密な検証、さらにはさまざまな写真/芸術理論の援用により紡いでいった著作である。「スナップ」とは、英語で瞬間撮影を意味する"snapshot"に由来しながら、日本においては技法にとどまらず独立したジャンルの名称となり、土門拳の有名な「絶対非演出の絶対スナップ」という言葉が例示するような写真に関するある特定の考え方、すなわち本書で「スナップ美学」と呼ばれる「写真媒体の最大の芸術的可能性をスナップに見出そうとする態度」を具現化するものであったとされる。本書 の目論見は、「芸術作品としての写真と大衆的文化現象としての写真の両者を横断的に論じる」ことによって、正典的な日本写真史に対するオルタナティヴな語り方を提示するという意欲的なものと考えられる。本セッションでは、この興味深い取り組みに、写真に関する理論や歴史叙述などの幅広い視点から光を当てていきたい。