日時:2021年7月3日(土)13:00-15:30

かつては鳥の鳴き声の先には必ず鳥がおり、笛の音色が聞こえればそこにはいつも笛吹きがいた。「オーディオヴィジュアル」という言葉が倒錯的であるのは、もともとは不可分のものであったはずの「音」と「映像」が、録音技術の登場によって切り離されたことを前提としつつ、それらを再び結びあわせようとするものだからである。アニメーションの歴史とともに、オープニングやエンディングの映像における独自の文法を発展させてきたアニソンを、表象文化論的な観点から考察するためには、そのようなオーディオヴィジュアルの根本的な倒錯性を念頭に入れておく必要があるだろう。アニメーション映像の「添え物」扱いされることもあったアニソンが、MTV放映開始以後に躍進を遂げたミュージック・ヴィデオと同様に、ポピュラー音楽において中心的な役割を果すようになったことは、これまでの音楽がむしろ「音」のみに還元されすぎてきた事実を、逆照射的に明らかにしているのかもしれない。あるいはかつてはアニメキャラクターの背後で純粋な「声」のみの存在であることを求められた声優が、歌い手としても脚光を浴びるようになって久しい今日では、「声」と「歌」そして「映像」との関係性が、改めて問われているのだとも言えよう。本シンポジウムは、アニソンをこのような20世紀以降のオーディオヴィジュアルの歴史の中に置き直すことで、インターネット時代を迎えてますます結びつきを強めつつある映像と音楽の関係を改めて考察するための、新たな視座の獲得を目指すものである。

問題提起:石岡良治(早稲田大学)
パネリスト:
輪島裕介(大阪大学)
石田美紀(新潟大学)
コメンテーター:細馬宏通(早稲田大学)
司会:橋本一径(早稲田大学)