日時:2016年7月9日(土)16:30-18:30
会場:立命館大学衣笠キャンパス 以学館1号ホール

高村峰生(神戸女学院大学)
當間麗(青山学院大学)
田中純(東京大学)
〈コメンテーター〉佐藤良明(放送大学)
〈司会〉北村紗衣(武蔵大学)

 2016年1月10日、デヴィッド・ボウイが69歳で他界した。その2日前である1月8日に最後のアルバムとなる『ブラックスター』がリリースされたばかりであった。新アルバム発売によって衰えぬ創作意欲をファンに示した直後の死であったため、その訃報は大きな衝撃をもって受け入れられた。
 本パネルは、デヴィッド・ボウイの業績を総括するといういささか野心的にすぎるとも言える試みである。ボウイは宇宙飛行士の声をまとってファンの前に現れ、黒い星となって宇宙に帰還するまで、宇宙人や伊達男、英雄やピエロなどのさまざまな役割を演じた。コンセプトに応じてサウンドもペルソナもがらりと変えるボウイのキャリアは極めてヴァラエティに富むものであり、さらにその表現が音に留まるものではなく、ダンスや映像やファッション、また発言なども含めた総合芸術であったことが、ボウイの業績全体を評価することを困難にしている。ボウイは幅広く芸術に影響を与えたアーティストとして高く評価されている一方、その芸術はしばしば敬遠され、無理解にさらされている。さらにボウイを愛聴していたファンであっても、特定の時代のボウイのパフォーマンスについてはよく理解できるが、それ以外の時期のボウイの音楽性についてはなかなか把握しきれない、というようなことも起こりがちである。こうしたことは、ボウイの芸術がひとつの軸ではうまく切り込めないような、変幻自在でジャンルを超越するものであったことに起因するであろう。このパネルにおいては、ボウイの1967年から2016年まで続いたキャリアをそれぞれの作品が有機的につながる宇宙として包括的にとらえ、かつ複数の角度から分析することによって、その総括に少しでも近づきたい。