7月4日(土) 小野記念講堂(早稲田キャンパス27号館B2F)
14:15-16:30

パネリスト:
・メタファーとしての爆発──20世紀初頭における都市の視覚表象をめぐって/菊池哲彦(尚絅学院大学)
・舞台における爆発とその総合芸術的快楽/北村紗衣(武蔵大学)
・地雷戦──中国の画報・映画・連環画における閃光と爆発の像/田村容子(福井大学)
・19世紀日本における硝石・火薬/福田舞子(大阪大学)
司会:
橋本一径(早稲田大学)

爆発は熱、光、風などを伴う破壊的な現象であり、人間の生活や自然環境に甚大な被害をもたらす脅威である一方、その五感をくすぐる派手な姿は、あるときは恐怖の源として、あるときは視覚的快楽をもたらす危険な美として、さまざまな象徴体系と結びつきつつ人々の想像力をかき立ててきた。また初期のフィルムの原料であるセルロイドに含まれるニトロセルロースが、爆薬の原料でもあることを考えれば、近代以降、爆発とその表象との結びつきは、より深いものに変化したのだとも言える。今日、特殊効果技術の発展の恩恵を受け、映画、テレビ、絵画、舞台芸術、音楽、文学などさまざまな媒体が多様な爆発表現を行っており、またそうした表現は一定の人気を博している。しかしながらメディアに多様な姿で表れているにもかかわらず、爆発についての学問的分析は科学技術の分野のものがほとんどで、文化や芸術の視点から具体的に爆発を論じることはそれほど盛んに行われているわけではない。また、先行する業績の多くは特定の分野内でしか知られておらず、文化や歴史を持つものとしての爆発について学際的な考察を行う機会はそれほどなかった。本シンポジウムにおいては、さまざまなメディアや芸術に登場する爆発の表象を文化史的な観点から検討することで、爆発というとらえがたい現象を多角的に分析することを目指す。


菊池哲彦(尚絅学院大学)
メタファーとしての爆発──20世紀初頭における都市の視覚表象をめぐって

本報告は、20世紀初頭、新たな視覚表象を論じる言説が、都市を「爆発」のメタファーで捉えることに注目し、メディア文化史的視点からその様相を考察する。ドイツ表現主義の画家ルートヴィッヒ・マイトナーによる印象派批判や、都市交響楽映画と密接に関連しているヴァルター・ベンヤミンの複製技術論など、20世紀の新たな視覚表象を論じる言説は、都市を爆発にかかわるメタファー(「爆撃」や「ダイナマイト」)を用いて論じている。爆発のメタファーで表象される都市の視覚性のありようを、特に当時の視覚メディアとりまく状況との関連で示してみたい。

北村紗衣(武蔵大学)
舞台における爆発とその総合芸術的快楽

本発表においては、’Liveness’が最大の魅力とされることが多い舞台芸術において、今までそれほど注目されてこなかった火気の使用、とくに爆発表現に注目し、舞台において爆発を実演することの芸術的メリットとデメリットを論じる。第一部においては、舞台芸術、とくに欧州の舞台における火薬の使用について歴史的な実績を確認する。第二部においては、現代の舞台においては爆発はどのように表現されているかを検討する。

田村容子(福井大学)
地雷戦──中国の画報・映画・連環画における閃光と爆発の像

中華人民共和国のプロパガンダメディアとしての映画や連環画(絵物語)には、1950年代から70年代にかけて、地雷を描く作品がいくつか見られる。本報告では、映画『地雷戦』(1962)とその連環画作品に注目し、地雷をめぐる描写の変遷を考察する。また、「地中に埋められる」という地雷の特性と中国の民間伝承、19世紀の画報(絵入り新聞)における爆発表現などとの関連を探る。

福田舞子(大阪大学)
19世紀日本における硝石・火薬

黒色火薬の発明以来、火薬は火器をはじめとした様々な用途で使用されてきた。日本へは火縄銃とともに伝来したとされ、火縄銃と同様、伝来当初からその調合法が注目された。本報告は、火器の使用が再び活発となる19世紀に着目し、火薬およびその原材料のあり方を通じて、当時の社会と火薬の関わりについて考察するものである。