新刊紹介 編著/共著 『ビールを〈読む〉 ドイツの文化史と都市史のはざまで』

森貴史(共著)
『ビールを〈読む〉 ドイツの文化史と都市史のはざまで』
法政大学出版局、2012年12月

旅の楽しみといえば、現地での食文化に舌を鳴らすことですが、そのさい、滞在中の町とその食文化はどのような関係にあって、いかにして成立しているのか、気になったことはないでしょうか。

本書のテーマ成立事情はそのあたりに立脚していて、ドイツの都市と地ビールの関係に着目して、これを地域史や文化史の視点から読み解こうとする試みが主眼となっています。

全15章であつかう都市は、デトモルト、ブラウンシュヴァイク、アインベック、ケルン、ゴスラー、バート・ケストリッツ、ミュンヒェンなどの大小さまざまです。

とはいえ、ベルリンのヴァイスビーアがいつ誕生したか、ヴァイエンシュテファンはほんとうに世界最古のビールなのかといった硬めの論究に終始するばかりではありません。

18世紀までは音に聞こえた地ビールを求めて、現在の都市を来訪しても、まったく徒労に終わったり、インフォメーションでもらったパンフレットに掲載されていた醸造所を徒歩で探訪しようとしたら、じつは乗り物でいくべき遠距離であったことが道中で判明し、途方に暮れたりといったエピソードも散在しております。

硬軟おりまぜた、ビールと都市の歴史をめぐる読み物として味読いただければ、幸いはなはだです。(森貴史)