新刊紹介

高橋透
『サイボーグ・エシックス』
水声社、2006年06月

ダナ・ハラウェイによって現代思想に座を占めたサイボーグだが、近年のバイオ・テクノロジーの進展は、人間=機械=動物の境界を越えた相互乗り入れの状況をますます活性化しつつある。本書は哲学思想畑の著者がまとめた現状のサーヴェイであり、また関連書物の紹介を通じて現状に対する考え方の糸口を模索する試みである。

サイボーグ・パフォーマンスの興奮とデザイナー・ベイビーの問題を並置する本書のエシックスは革新主義的だ。「ハイブリッド存在ということが、今後人間の本質基底となる」ことが必定であるなかで、「不純な混ぜ者」となるわれわれは、自分たち自身と世界の制御において、かつての「人間の尊厳」とは異なる、どんなエシックス組み立てていくのか。本書の引き受けた思考の中では、倫理学とSFとの境界も、必然的に崩れている。(佐藤 良明)