翻訳

岡嶋隆佑、山下智弘、鈴木優花、石井雅巳(訳)

グレアム・ハーマン(著)

四方対象 オブジェクト指向存在論入門

人文書院
2017年9月
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思弁的実在論の中心人物の一人であるグレアム・ハーマンの初の邦訳書。本書においてハーマンは、一方で何らかの基礎的要素、他方で経験的な性質や関係へと還元されがちな「対象(object)」という身分を最大限に重要視する、自身のオブジェクト指向存在論を、後期ハイデガーの謎めいた「四方界」の概念の解釈を通じて整理し直すことで、因果性や時間や空間、汎心論、そして思弁的実在論の代表的論者の思想といった様々なトピックに対する包括的な説明を試みている。序文*で述べられている通り、本書はフランスの読者への著者の思想の導入となることを意図して書かれたものであり(その意味で「最初の邦訳」に相応しいものではあるのだが)、各論点について、必ずしも十分な議論を提示しているとは言い難い。しかし幸いなことに、今後いくつかの重要論文・著作の邦訳が予定されているので、まずは本書でハーマン哲学の概要を把握した上で、個別・発展的な議論へと進んでいくことで、その全容の把握が可能となるはずである。

*本書の成立の経緯が記された「英語版への序文」は、出版社HPからPDFをダウンロードすることができる。http://www.jimbunshoin.co.jp/book/b286932.html

(岡嶋隆佑)

広報委員長:横山太郎
広報委員:柿並良佑、白井史人、利根川由奈、原瑠璃彦、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2018年2月26日 発行