編著/共著

浅子佳英、藤村龍至、本田晃子、上田洋子(著)

未完の万博

ゲンロン
2025年9月
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2025年10月13日、大阪・夢洲で184日にわたって開催された、EXPO2025大阪・関西万博が閉幕した。

周知のように、同万博は計画の段階から多くの問題を抱え、絶えず批判や非難の対象となってきた。ずさんな予算管理、夢洲へのIR(統合リゾート)導入、夢洲という会場へすべてのパヴィリオンを集約する旧態依然とした会場計画の是非、開発によってもたらされる環境負荷……。閉会後の現在も、パヴィリオンの建設費用の未払いをはじめ、未解決の問題は山積している。『未完の万博』は、そのような今回の大阪万博を、主として建築と建築史の視点から読み解く試みである。

本書前半には、建築家である浅子佳英と藤村龍至の対談と、藤村による補足的な論考「未来都市は荒屋敷である──対談のあとに」が収録されている。

浅子・藤村対談では、主としてパヴィリオン建築における内部とファサードの断絶や、スマホ上の情報空間と建築空間の齟齬、トイレのような身体的な空間の組織化をめぐる問題が論じられる。なかでも興味深いのは、万博会場の配置図とショッピングモールのフロアプランとの近さの指摘だ。大屋根リングによって囲まれることによって、万博空間はショッピングモールへと接近しているのである。

後半には、ロシア演劇を専門とする上田洋子とソ連・ロシア建築史を専門とする筆者(本田)の対談と、本田による論考「万博会場に空いた穴──不在のロシア館を通して見る、万博建築の過去と現在」が掲載されている。

戦後、ソ連政府は万博を自国のプロパガンダの場として重視し、実際、多くの万博においてソ連館は一番人気の座を占めた。しかし今回のEXPO2025では、ロシア軍によるウクライナ侵攻をきっかけとして、ロシアは万博への参加を辞退している。対談や本田論考では、ソ連館を中心とする万博建築史の振り返りに加え、アンビルトに終わることになった今回のロシア館のデザインや、ウクライナによる展示《Not for Sale》の紹介・分析が行われる。

全体として、本書の狙いはジェネラルな万博論ではなく、特定の視点から万博を眺めることによって浮かび上がる問題の布置を確認することにあるといえる。もっとも、今回の万博を70年万博と同様に未来都市のモデルとするならば、万博閉幕翌日から藤村の企画によって新宿《ホワイトハウス》で開催された「未来都市は荒屋敷」展のように、本書もまた未来都市への批判的な応答として、より普遍的な意味を獲得しうるかもしれない。

(本田晃子)

広報委員長:原瑠璃彦
広報委員:居村匠、菊間晴子、角尾宣信、二宮望、井岡詩子、柴田康太郎
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2026年2月28日 発行