編著/共著

小松田儀貞、木村直弘、野村幸弘、阿部宏慈、笹島秀晃、戸舘正史(著)

アートはいつ〈アート〉になるのか 〈アート化〉とは何か

水曜社
2025年10月
複数名による共(編/訳)著の場合、会員の方のお名前にアイコン()を表示しています。人数が多い場合には会員の方のお名前のみ記し、「(ほか)」と示します。ご了承ください。

本書は、科研費基盤研究(B)「社会とアートの共進化的動態とartificationの諸相に関する領域横断的研究」(JSPS20H01576)の研究成果の一部として編まれた。研究代表者=編著者の専門である知識社会学的視点を軸としつつ、各研究分担者の専門分野である音楽学、美術史学、映像研究、文化社会学、文化政策・アートプロジェクト研究の視点から、日本におけるartification=〈アート化〉および「社会とアートの共進化」の諸相が全6章で考察される。すなわち、①〈アート化〉についての問題意識共有を兼ねた総論に続き、各論として②音楽批評(ファンファーレ・チョカリーア初来日公演)、③日本美術(縄文土器、土偶、円空、若冲、浮世絵)、④映画祭(山形国際ドキュメンタリー映画祭)、⑤アートプロジェクト(きむらとしろうじんじんの野点)、⑥社会的実践としてのアート(クリエイティブサポートレッツ、釜ヶ崎芸術大学)で具体的事例がそれぞれ取り上げられる(前半①〜③が学術的色合い強めの論考であるのに対して、後半④〜⑥は文化芸術活動の現場に近い立場からの報告となっている)。

そもそも〈アート化〉artificationとは何か。それは21世紀初頭、動詞artify(飾る、美化する、人工的にする、芸術に変える、生活を豊かにする、の意)から派生・造語された術語で、非芸術的な対象・行為・状況が、芸術的なものとして認識・扱われるようになるプロセス(およびその結果)を指し、芸術あるいはアートの境界がどのように形成され、変化し、制度化されるかを考える際の重要な概念である。

〈アート化〉についてはこれまで、進化人類学、芸術社会学、日常美学といった学術的コンテクストでの議論が続けられてきたが、本書は、上掲科研テーマに掲げられているように、社会とアートの関係の変化を「共進化」のプロセスとして捉え、新しい対象や行為が出現し関係や制度が変容していく社会的変化のダイナミックなプロセスとしての〈アート化〉に注目して、現代社会の文化現象を読み解くことを目的としている。

そして、本書の基本コンセプトは、その自家撞着的なタイトルに示されているように、ネルソン・グッドマンの「いつ芸術なのか」をふまえ「いつ〈アート化〉なのか」を問うたフランスの芸術社会学者ロベルタ・シャピロ&ナタリー・エニックの議論の延長線上にある。よって、副題にある「〈アート化〉とは何か」という問いについても、本書独自の定義づけは最初から志向されておらず、上掲の多様な具体的事例の分析を通して〈アート化〉の諸相を浮かび上がらせること自体がその問いへの「プロセス」的回答となる戦略を採る。

ちなみに、編著者・小松田儀貞は本書では科研の研究代表者として総論やまとめに徹しているが、すでに〈アート化〉に関する日本初の(本書よりも分厚い)研究書であるその単著『社会化するアート/アート化する社会:アートの社会と文化芸術の共進化』(水曜社、2022年)で、地域社会とアートプロジェクトに関する豊富な具体的事例を扱っている。併せて参照されたい。

(木村直弘)

広報委員長:原瑠璃彦
広報委員:居村匠、菊間晴子、角尾宣信、二宮望、井岡詩子、柴田康太郎
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2026年2月28日 発行