親子休憩室の設置と学会員選書による絵本展示
2013年度からこの学会で続く親子休憩室設置の取り組みが、本大会では、新たな催しを加えて実施された。学会員選書による絵本の展示である。学会員19名がそれぞれ一冊の絵本を選び、推薦文を寄稿した。推薦文は絵本とともに休憩室内で展示された。
本来の目的である託児に支障を来さないよう配慮して会場はレイアウトされた。展示空間にはゆとりがあり、一冊一冊ディスプレイされた絵本を手に取り、紹介文を読みながらゆっくり時間を過ごす来場者が多く見られた。
私はこの企画におもに編集補佐として関わった。未読だった絵本は多く、実際に会場でそれらを手に取り、既読のものも読み直し、結局、時間をかけてじっくりと観賞することになった。学会員の紹介文は、その一冊が選ばれた理由も興味深く、自分がまったく知らずにいた絵本へのアプローチを数多く教示された。絵本はかならずしも幼児を対象読者として限定するものではなく、むしろ無限定的で、思ってもみない読み方、見方ができることを知った。絵本を触媒として来場者同士の会話が生まれ、そのときどきに思いがけない広がりを見せたようだ。また、絵本を見に来たことで、親子休憩室がどのような場所か(そもそもこの取り組みがあること自体)を初めて知ったという来場者もいたそうだ。
育児中の会員が親子で学会に参加できるようにするための場があることはとても望ましいことだと考えるし、今後もこの場が学会に確保されてあることを継続して示すのには大きな意義があると信じる。今回は託児利用者が1名のみと少なかったが、親子休憩室をより一層利用しやすい、開かれた場にしてゆく試みとして、絵本展示は効果的であると思う。来年度はぜひ拡大版を実施できればと考えている。ご意見、ご要望、ご批判をいただけますようお願いいたします。学会組織における育児の場をめぐる貴重な考察として、昨年度の渡部宏樹さんによる報告記事「開催校企画ワークショップ Bring Your Kids! 学会と子育てについて考える 報告」もぜひご一読いただきたい(https://www.repre.org/repre/vol52/conference18/ws00/)。
本企画は学会長の門林岳史さんが立案し実務にあたり、すでに述べた通り、私は補佐的な役割で関わらせていただいた。絵本の選書は学会広報を通して学会員に広く募ったほか、直接ご依頼した方もいる。快くご協力いただきありがとうございました。親子休憩室は2024年度から、(株)赤ちゃん本舗、NPO法人ConoCoとの協力体制で運営されている。昨年度と同様、(株)赤ちゃん本舗の野口福太郎さん、Concoの塩谷雅子さんには会場づくりのご協力をいただいた。絵本のほとんどはConoCoからの貸出しを受けた。記して謝意を表したい。
選書一覧を付記する。
『うろんな客』 (⼩森真樹)
『おなかのすく さんぽ』 (平倉圭)
『おばけいしゃ』 (浜野志保)
『おやすみなさい おつきさま』 (星野太)
『おやすみなさい フランシス』 (⼩澤京⼦)
『カラー図鑑 フェミナ・サピエンス全史̶̶⼈類の進化と⼥性の祖先』 (⾹川檀)
『⽊はいいなあ』 (千葉雅也)
『きみなんかだいきらいさ』 (シュテファン・ヴューラー)
『キャベツくん』 (⼭内朋樹)
『さわる絵本 ちびまるのぼうけん』 (横⼭佐紀)
『じごくのそうべえ』 (佐藤守弘)
『どもるどだっく』 (三浦哲哉)
『HUG たいそう』 (北村紗⾐)
『ヒト ニ ツイテ』 (國分功⼀郎)
『ミュージアムポップアップ フランス国⽴⾃然史博物館』 (⾨林岳史)
『めっきらもっきら どおんどん』 (郷原佳以)
『よなかのこうえん』 (増⽥展⼤)
『ロバのおうじ』 (柳澤⽥実)
『綿の国星 昼の夢 夜の夢』 (⽯岡良治)
以上