翻訳
技術的対象の存在様態について
みすず書房
2025年5月
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1957年10月にパリ第四大学に提出され、翌年4月に口頭審査をパスした国家博士号請求論文の副論文が『技術的対象の存在様態について』である。審査に先駆けて出版された本書はその片割れである主論文『個体化の哲学』(法政大学出版局、2018年;2023年)とともにジルベール・シモンドンの全著作を構成している。主論文の出版が紆余曲折をたどり、当初の姿を取り戻したのが今世紀になってであったことを考えるなら、著作という形態へのこだわりが異常に薄いシモンドンの副論文が、おそらくは制度的に求められてだろうとはいえ、すみやかに出版されたことは僥倖であった。
もっとも、だからと言って本書全体が十分に理解されてきたわけではないだろう。おそらくどれか一つを独立させても十分に技術論として成立しうるようなパートが、しかし切実な哲学的意図のもとに統一されているのが『技術的対象の存在様態について』である。もちろんそのすべての議論が全面的にあたらしいわけではないが、しかし本書のプランがかなり独特であるのは間違いない。その独特さは初版刊行から67年を過ぎた本書に今なおアクチュアリティを与えているように思われる。紋切り型ではない理解と活用が日本語圏でもさまざまに展開されることを望む。
(宇佐美達朗)