編著/共著

森元庸介、ほか(訳) 鵜飼哲(編著)

動物のまなざしのもとで 種と文化の境界を問い直す

勁草書房
2022年7月
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動物を論じることは人間を論じることから切り離せず、必然として、暴力を論じることから切り離せない。長きにわたった共同研究をもとに編まれた本書にとっても、暴力はありうべきトピックのひとつというよりはるかに、全篇の根底を成しながら各章を貫くモティーフとなっている。

だが、第III部のタイトルに「軍事的暴力と動物たち」を冠する書物にあって、人間が動物に加える暴力を注視することは、ただちに、人間と人間のあいだの暴力を新たに問い直すことなのでもある。暴力に虐げられる人間、逆に暴力を加える人間、ときとして同時にその両者である人間が、動物の形象とともに名指され、描き出される折がある。それによって動物はさらに深く貶められるといわねばならぬ折が確実にあり、悪しき人間主義の温存にどれほどの注意を向けたとて足りることはない。形象化のもたらす帰結の錯綜を追いながら、人間のあいだの暴力が動物への暴力と容易に重なりうる端的な現実を片時も見失ってならないのはむろんである。さりながらまた、抵抗のための未聞の方途を動物に学ぶ、そのような局面が否みようなく存在し、思いがけず視界が開かれる(とりわけ、第6章「比較から近接地帯へ」(申知瑛)末尾で短く引かれるヒヒたちによる「意識的」な抵抗の鮮烈な印象)。

文学──ごく一部を挙げるだけでも、津島佑子、デフォー、金石範、末吉安持、大江健三郎──に問いかけ、必然として常に政治と経済と戦争、そしてまた性の歴史を視界に収め、だからまたいくつもの具体的な場所──いくつかをだけ書き抜くなら、沖縄、京畿道漣川郡、しかし日本のアリラン村、イスタンブル、ブレスラウ(ブロツワウ)──を経めぐる旅の記録でもある本書は、動物を見つめ、動物に見つめられる人間を見つめ直し、両者の近しさと遠さ、その絶えざる浸透と反転の縺れを決して裁断することなく見据えて、始められたばかりの探索に加わろうとするひとびとのための、不可欠の里程標となっている。

(森元庸介)

広報委員長:増田展大
広報委員:岡本佳子、髙山花子、福田安佐子、堀切克洋、角尾宣信、居村匠
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2023年2月22日 発行