翻訳

飯田麻結(訳)サラ・アーメッド(著)

フェミニスト・キルジョイ フェミニズムを生きるということ

人文書院
2022年6月
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フェミニストになること、フェミニストであること、フェミニストとして生きること──こうした経験はつねに一貫してあなたの人生を形づくっているわけではない。どんな物語にも始まりがあるし、時には理不尽な中断や終わりを迎えることもある。この本はフェミニストになるための方法を教えてくれるものではないと断言しよう。これは一人のフェミニストが辿った道筋と、それらと交差する多くのフェミニストやフェミニズムの断片からできていて、理論のテクストだけではなく小説や映画、身近な人々との対話のなかに生き延びる方法を探る旅の軌跡でもある。キルジョイという言葉は、フェミニズムを生きることの喜びと困難を同時に表している(この言葉を「興ざめ」「わきまえない」などと訳すこともできただろうが、たぶんわたしたちは否定形で語られることにもうんざりしている)し、性差別や人種差別が日常に存在しているということは、フェミニズムもまた日常的な実践であるということだ。それがぷつんと切れるスナップ瞬間であっても、自分の感情をないがしろにしないこと。誰かに目を剥かれるときも、わがままだと見なされた意志を手放さずにいること。差し伸べられる手ではなく、一緒につなぐための腕のありかを見つける羅針盤として、本書はたくさんの手がかりを与えてくれる。

(飯田麻結)

広報委員長:増田展大
広報委員:岡本佳子、鯖江秀樹、髙山花子、原島大輔、福田安佐子、堀切克洋
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2022年10月23日 発行