編著/共著

貝澤哉、杉浦秀一、下里俊行(編著)鳥山祐介、ほか(著)

〈超越性〉と〈生〉との接続 近現代ロシア思想史の批判的再構築に向けて

水声社
2022年3月
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本書は、18世紀から20世紀初期の近現代ロシア思想史を、「〈超越性〉と〈生〉との接続」という視点から再構築することをめざす共同研究の成果である。普遍的・絶対的な「超越性」と、具体的でフィジカルかつ歴史的な「生」の個別特殊なあり方をじかに接続しようとする強い希求は、スラヴ派の「霊的共同性(ソボールノスチ)」理念からソロヴィヨフの「全一性」概念を経て、「具体的観念論」(S.トルベツコイ)や、「有機的・具体的なる観念実在論」(N.ロスキー)、「具体的形而上学」や「宗教的唯物論」(P.フロレンスキー)などに至るまで、ロシアの哲学思想のなかに鮮明な刻印を残している。しかし、国民的な思想的独自性のようにも見えるこうした「超越性」と「生」との接続は、じつは近代西欧を中心とする世界の思想・文化的なコンテクストをつねに睨み、それとの深い相関のなかで形成されてきたのではないか──19世紀教育思想における物理的身体観と神化(テオーシス)思想との隠れた関係、自然法の超越性を世俗化しようとした新カント派法哲学とロシア法思想とのかかわり、西欧の解釈学、現象学とバフチンの他者理論との結びつきや符合……そのほかにも、文学や教会史、科学史等の視点からの多彩で興味深い論攷がここには集められている。

(貝澤哉)

広報委員長:増田展大
広報委員:岡本佳子、鯖江秀樹、髙山花子、原島大輔、福田安佐子、堀切克洋
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2022年10月23日 発行