翻訳

河合祥一郎(訳)

ジェイムズ・シャピロ(著)

『リア王』の時代 一六〇六年のシェイクスピア

白水社
2018年2月
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本書は、コロンビア大学教授ジェイムズ・シャピロが、シェイクスピアの人生における重要な一年として、1606年に焦点を当てたシェイクスピア研究書である。1605年の秋にシェイクスピアが下宿近くの本屋で『レア王実録年代記』という本を手にしてから翌年それをもとに悲劇『リア王』を執筆した経緯や、同じく1606年に『マクベス』や『アントニーとクレオパトラ』を書いた政治的状況などを詳細に解き明かし、当時のロンドンの空気を吸えるかのような臨場感にあふれ、小説さながらに読める研究書である。イギリスではいまだにガイ・フォークス・デイに花火が打ち上げられ、お祭りになっているが、そのガイ・フォークスが起こした1605年11月5日の火薬陰謀事件(ガンパウダ―プロット)の顛末とその余波について詳しく読めるのも魅力だ。さらにこの本を攻撃する批判書も飛び出し、その攻撃内容の解説も含めて、詳細な訳注を施した。原書にない系図なども含めれば77ページに及ぶ注釈をつけた。シェイクスピアを研究したいと思う人にはぜひ読んで頂きたい一冊である。

(河合祥一郎)

広報委員長:横山太郎
広報委員:柿並良佑、白井史人、利根川由奈、原瑠璃彦、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2018年6月22日 発行