編著/共著

神田孝治、遠藤英樹、松本健太郎(編著)

谷島貫太増田展大、ほか(分担執筆)

ポケモンGOからの問い 拡張される世界のリアリティ

新曜社
2018年1月
複数名による共(編/訳)著の場合、会員の方のお名前にアイコン()を表示しています。人数が多い場合には会員の方のお名前のみ記し、「(ほか)」と示します。ご了承ください。

2016年7月、スマートフォン向けの位置情報ゲームとして配信が開始されたポケモンGOは、その人気ぶりから一躍脚光を浴びつつも、他方では無数の社会問題を惹起するに至った。こうした問題のなかでとくに顕在化することになったのは、画面に意識を固定されたプレイヤーの行為と、その画面外における社会とのあいだに生じたある種の「軋轢」であった。

周知のように、ポケモンGOによってもたらされた「熱狂」が今日まで継続しているというわけではない。嵐のようなブームが過ぎ去ったあと、本ゲームがマスメディアに取りあげられる機会は極端に減少していった。むろん昨今では、日々、ある特定の作品や事象がマスメディアやソーシャルメディアの回路を通過し、それが人びとの注意をいっとき占拠しては忘れさられる、というサイクルが量産されてはいるが、その意味では、ポケモンGOはまさにその最たる事例となりつつあるようにも思われる。しかし他方で、そのような流行現象はそれが忘却された後も、以前とは異なる「何か」をわれわれの世界に持ち込みつづける、といえるかもしれない。

2018年1月に新曜社から刊行された『ポケモンGOからの問い── 拡張される世界のリアリティ』は、当該ゲームがもたらした「何か」を多角的に把捉するための場として、換言すれば、それがもたらした「問い」(もしくは「挑戦状」?)を各領域の研究者が受けとめ、それに応答していくための場として構想された。より具体的にいえば、ポケモンGOというゲーム、およびそれに付随して惹起された社会現象を研究の対象として、鈴木謙介氏による巻頭インタビューにつづいて、記号論、文学理論、視覚文化論、技術哲学、観光社会学、地理学、デジタル地図、コンテンツツーリズム、イスラミック・ツーリズム研究など、多彩な学問的背景をもつ18名の執筆陣がそれぞれの専門性をいかした議論を展開している。

たとえばゲームをめぐる「シミュレーション」の様態、デジタル地図と身体移動の関係、「聖地」の形成メカニズム、ゲームを利用した地域振興の試み──それぞれの専門分野における主要概念、あるいは、それをめぐる議論がどのように変わった/変わる可能性があるのかを、また、ポケモンGO以降に、われわれが各領域で何を問う必要があるのかを、執筆者たちが各自の研究視点に依拠してさまざまな視座から考察している。本書をお読みいただければ、リリース当時の、「2016年的な想像力」の欠片を象徴的に提示するポケモンGOが、いかに学問的にみて興味深く、また、検討に値するものでありえたのかが理解されると思う。

(松本健太郎)

広報委員長:横山太郎
広報委員:柿並良佑、白井史人、利根川由奈、原瑠璃彦、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2018年6月22日 発行