単著

鈴木洋仁

「元号」と戦後日本

青土社
2017年8月

本書は「元号」を「歴史意識における時代区分のインデックス」と位置付け、「戦後」という時代区分と対比し、その意味を問う歴史社会学の試みである。

同書では「昭和」「大正」「明治」について、それぞれ「昭和史論争」「大正デモクラシー」「明治百年」といった、いずれも昭和30~40年代の戦後空間におけるトピックを検討対象とし、主に論壇人のテクストを読解しつつ、それぞれ「もはや「戦後」ではない」「戦後民主主義」「戦後二十年」という同時代の「戦後」言説との対比を通じて、「元号」がいかに歴史意識を反映したのか、いかに時代区分を為すかのように扱われたのか、そしていかに言説生成主体の意図からずれて展開したのかを明らかにしている。その意味で、同書は「戦後」という時代区分の拘束力を相対化する戦後社会論であり、戦後論壇史の記述である。同時に注目すべきは、同書が絶えず「社会学」的であろうとし、その学問的な位置を自問しつつ「近代日本」の歴史意識を解明しようと努めていることである。冒頭二章に亘る問題・対象・方法の提示に加え、終章では「近代」「日本」「歴史意識」が取り出され「戦後」の相対化が試みられる。問題提起的な一冊である。

(茂木謙之介)

広報委員長:横山太郎
広報委員:柿並良佑、白井史人、利根川由奈、原瑠璃彦、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2018年2月26日 発行