編著/共著

石谷治寛、鈴木慈子、廣田治子、大久保恭子、山本友紀(分担執筆)
永井隆則(編著)

〈場所〉で読み解くフランス近代美術

三元社
2016年11月
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本書は、フランスの近代画家たち──クールベ、ピサロ、セザンヌ、ゴーギャン、マチス、レジェ──の表現を地方都市と切り離せないものとして考察している。19世紀に関する社会史的な美術史は、中央集権への反撥、周縁部での越境や異種混淆などに注目し、「セザンヌ──パリとプロヴァンス」をはじめとして、タイトルに地名を冠したさまざまな展覧会につながった。本書では、膨大な先行研究の成果を手際よくまとめた論考に加えて、著者たちによる現地の写真やカラー図版が充実し、参考文献も網羅されている。ところで本書で多くの著者が画家の「夢想」に注目していることは、風土論や社会史研究を一歩踏み出した成果だろう。心理学や神経科学が病理と正常の微細なスペクトラムを査定し、人工知能が意識や創造力に置き換えることさえできるかもしれない未来が喧伝される時代に、人間の創造行為における「夢想」とその異例性を、自然の生態系のみならず、土地に根ざした集合的記憶も含む、固有の「場所」との関連で捉え直すことは、単なる懐古趣味ではないはずである。

(石谷治寛)

広報委員長:横山太郎
広報委員:江口正登、柿並良佑、利根川由奈、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2017年7月29日 発行