編著/共著

増田展大、ほか(共著)
小池隆太 、小山昌宏、玉川博章(編著)

マンガ研究13講

水声社
2016年8月
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タイトルの「13講」は、ガイダンス+講義13回+まとめで構成された半期15回講義のテキストとしての企図の反映である。学部2年生あたりを対象読者としたつもりが、編者を含む全執筆者が気合いを入れて書きすぎたため、初学者向けを通り越して今日の研究上の課題に真っ向から向き合う論集となり、総頁数も当初予定よりぶっとんでしまった。版元のご尽力で価格は抑えた。実際、大学の講義でも喋りすぎることはあるわけで、むしろその部分にこそ面白さがある(はずだ!)

では、この「13講」はどのように組まれているのか。今日のマンガ研究は大枠として、マンガ史研究・マンガ文化研究・マンガ表現研究の三つの流れから行われている。この流れに「学」としての体系性を求める向きもあるが、本書の企図は逆である。教育論(伊藤剛)、歴史論(遠藤広之)、文学論(大橋崇行)、表現論(小山昌宏)、キャラクター論(岩下朋世)、ジェンダー論(西原麻里)、映像・芸術論(増田展大)、記号論・物語論(小池隆太)、産業論(玉川博章)、同人誌論(飯塚邦彦)、観光論(岡本健)、ミュージアム論(伊藤遊)、海外受容論(小田切博)。以上、13の論題を設定し、これら多彩な切り口からマンガを学術研究の対象とするとき、どのようなアプローチが可能であるか、現在の研究がどう進んでいるか、今後の課題はどこにあるかが語られる。従来の三つの流れにとらわれず、また漠としたテーマ設定のもとに作家/作品研究を寄せ集めているのでもない。この「13講」は、マンガ研究の「学際性」を示すことを意識しながら、同時に各々のディシプリンの特性がマンガという共通項において集約されるさまを俯瞰できるよう、入念に仕組まれたオムニバス講義である。

マンガ研究における理論と実践は、批評・分析と実作品制作の両輪として捉えられがちであるが、本書が提示するのは、そうした枠をすでにはみ出しているマンガに関する学際的アプローチの広がりと深まりである。マンガを必ずしも専門としない学科・専攻の学生・大学院生や研究者が自分の立場からマンガへとアプローチするための道標として、そして専門の研究者に対する既存のディシプリン群からの新たな問題提起として本書は機能するだろう。

(小池隆太)

広報委員長:横山太郎
広報委員:江口正登、柿並良佑、利根川由奈、増田展大
デザイン:加藤賢策(ラボラトリーズ)・SETENV
2017年3月29日 発行