新刊紹介

ミハイル・ヤンポリスキー
『隠喩・神話・事実性—ミハイル・ヤンポリスキー日本講演集』
平松潤奈・乗松亨平・畠山宗明(共訳)、水声社、2007年05月

 06年、表象文化論学会の立ち上げに(豪放さの)花を添えてくれたロシア出身のヤンポリスキー教授(現ニューヨーク大)の講演とインタビューを収め、長時間の「共同討議」を加えた本。
 「隠喩・神話・事実性」は、われわれの第1回大会の基調講演だが(『REPRE』01に報告あり)、本書に掲載されたのは後日ロシア語でまとめ直した原稿からの翻訳であるため、英語ではわかりにくかったかもしれない氏の議論を、より煮詰まった形で読むことができる。二つめの「文献学化──ラディカルな文献学のプロジェクト」は、その数日後やはり東大で行われたUTCP(共生のための国際哲学センター)主催の講演であるが、これもそのもとになった同題のロシア語論文からの翻訳したもの。最後の「イワン雷帝──個と類型の彼岸」は、当時まだ「設置委員会」の段階だった立命館大学映像学部の企画であり、エイゼンシュテインの作品に即した分析となっている。
 人文学全体を引き受け、地球横断的に活動している氏の議論は、もとよりとっつきやすいものではないが、本書は読みやすい訳文と親切な構成のおかげで、ロシア文化に詳しくないものにも通じるものになっている。小林康夫氏による序文、乗松氏に北野圭介・番場俊両氏を交えての「共同討議」、そして特に平松・乗松両氏によるインタビューが理解を助けてくれる。 (編集部)